霊園の廃トイレ 【ネット初公開】
2020/01/01
墓地の中に人知れず存在する廃便所
この話は6年前、派遣先の工場で聞いたものだ。
私は当時ニートとフリーターを繰り返しており、日夜ネトゲか漫画を読むことに没頭するだけの廃人。
貯金は底をつきかけ、日雇い派遣の登録をして各地の工場を転々としては食いつないでいた。
この日もいつものように工場で労働、休憩時間は格安タバコ「わかば」に火をつけ煙をくゆらす。
そしてよく知らない相手と軽い挨拶、たわいない話をする。
その時たまたま会話したA君も同じく派遣で、高校卒業してすぐ働いているとのことだった。
なんでこのような話になったのかはよく思い出せないが、単車で心霊スポットによく行っているそうで、やや興奮気味にこう語っていた。
「あそこやばいんスよ!出るらしいですよ!」
「〇〇霊園ってとこにある気味悪い便所なんですけどね、やばいんっスよ」
よくあるイワレだ。一体何がヤバイのか?何が出るというのだろうか?けれどもこの場所には興味が持てた。
日ごろからオカルト関連のサイトを読み漁るのが趣味で過ごしてきたが、この件は初耳だったからだ。
続けて聞いていれば、場所はS県某所の霊園で、墓地を抜け裏手にある小高い山を登ればそのトイレはあるのだとか。
その上、気になり帰宅後に検索してみたが情報はなかった。
実在するのかも半信半疑だったが、新たなスポットを開拓できるかもというわずかな期待。
そして、私が不思議な体験をすればそこはもう心霊スポットと呼んで差し支えないだろう。誰も知らないオカルト情報の一次ソースになれるかもしれない。という偏執的な思い込みが行く動機だったように思う。
その後、派遣も辞め再び無職に戻り、単に暇であったからかもしれないが…自然と不思議なものを求める衝動に駆られ現場へ赴いていたのだ。
S県某所の墓地へ
●問題のトイレはS県某所の寺にあるそうだ(※イタズラ防止の為モザイク処理をしています)
●墓地を抜け、裏手にある小高い山を登っていく
●情報通り、目的のトイレはあった。コンクリートブロックを積層した見たこともない作りだ。形状はガスボンベ置き場に近い
●窓と電灯はなく中は真っ暗だ。たしかに「やばい」との気持ちになるのはわかる。夜に近づきたいと普通は思わない
●中を照らすと内部に木が生え、床は落ち葉と泥で覆われていた。手入れされず相当な年月放置されているのだろうと推測する。小便器は見当たらず、奥には大便所らしき区画がみえる
●個室を覗いてみた、ドアはない。今ではほとんど見かけることはないぼっとん便所だ。木の蓋が朽ち、隙間からは水面が見える。気持ちがわるい
●水面の奥がよく見えるようできるだけ接写した。特におかしなものは水中に見られなかった
探索者より
思い返せば、幼い頃からトイレと怪談は密接だった。
ポンキッキの「トイレの花子さん」、学校怪談シリーズであるとか、地獄先生ぬーべーの「赤マント」等、トイレにまつわる怖い話はよく見てきた。その影響で何度か花子さんの降霊実験をやったことがある。(3番目のトイレのドアをノックして「花子さん遊びましょ」と呼ぶ)
とにかくトイレ=怪異を連想してしまうのは無理もない時代を過ごしたのだ。
で、そんな幼少期を過ごした者が実際行ってみれば、A君が「やばいやばい」と騒ぐ気持ちはわかる。
墓地とトイレという組み合わせは怖い思いするには至高な組み合わせだと思うし、トイレから声をかけられる、得体のしれないものに引きずりこまれてしまう、との嫌な想像をめぐらせるのは当然だ。
しかし結局は心霊現象なんて起こらず、私が体験したことは、糞と尿が混じった泥まみれの地面に踏み入り、臭い汚い…虫がたくさんのぼっとん便所を撮るという…最悪な気分に陥っただけ。
自業自得なんだろうけど、もういい加減にしてほしいってなる。
「幽霊縛りアップリケ!幽霊を闇の世界に連れ戻しなさーーい!!」(発狂)
現在このトイレは取り壊され現存していないそうだ。
帰宅後は念入りに体を洗って、泥まみれの靴は捨てた。
